白内障とは
白内障の多くの原因は、加齢により生じる水晶体の混濁です。早ければ40歳前後で発症し、80歳を超えると、程度の差はありますが、白内障がある方がほとんどです。ただ、若年層であってもアトピー性皮膚炎や糖尿病などの疾患により、発症するケースもあります。
症状としては、カメラで例えるとレンズの役割をする水晶体が混濁するので、全体的に視界がぼやけ見づらくなります。初期の場合は、視力低下をはっきり感じるということはありません。それでも、日差しが強い屋外にいると見づらいとか、夜間、車のライトがまぶしいといった症状が見られるようであれば、白内障の疑いがありますので、一度眼科を受診されることをお勧めします。
こんな症状のある方は、ご相談ください(例)
- 目が霞んで、辺りが白く霧がかかったように見える
- 明るいところでは、かえって目が見えにくい
- 太陽光や街灯、車のヘッドライトなどの光をひどく眩しく感じる
- 小さな文字が読みにくくなる
- メガネの度が急に合わなくなる など
検査について
患者様の訴えや症状などから、白内障が疑われる場合は以下のような検査を行います。
- 視力検査
- 裸眼視力や矯正視力(眼鏡やコンタクトレンズで矯正して見える視力)を検査します。矯正視力の低下がみられる場合は、目の病気があるかもしれません。
- 細隙灯顕微鏡検査
- 細隙光を目に当て、結膜や角膜、水晶体、硝子体などの状態を顕微鏡で拡大して観察します。
- 眼圧検査
- 眼球の硬さを計る検査です。眼圧は21mmHg程度までが正常値ですが、眼圧が高いと緑内障が生じている場合があります。
- 眼底検査
- 目の奥(眼底)にある網膜・網膜血管・視神経乳頭の状態を調べます。白内障以外の疾患がないかどうか検査します。
治療について
白内障があった場合、ご希望があれば白内障治療用点眼液を処方します。なお白内障用点眼液は、白内障の進行を遅らせるのが目的ですが、効果には個人差があり根本的な治療ではありません。
白内障の手術は、水晶体の混濁による視力低下が日常生活に支障をきたす場合に検討します。手術では、顕微鏡を用いて2.7mm以下の小さな切開を行い(図1)、濁ってしまった水晶体を超音波細かく破砕して取り除き(図2)、代わりに眼内レンズ(人工レンズ)を挿入します(図3)。手術は、点眼麻酔など局所麻酔下に行い、痛みを感じられないように注意して行います。白内障の重症度にもよりますが、手術時間は10~15分くらいです。
当クリニックでは、白内障手術を無理にお勧めすることはありません。白内障の重症度、ご本人のご不自由さや全身的な疾患の状態、ご家庭の環境などを考え、十分ご相談の上、手術を検討していただいております。視力低下の感じ方やご不自由さは個人差があります。手術を検討するにあたっては、まず手術の内容を患者様に詳しく説明し、より深くご理解いただけるよう努めております。ご質問やご相談につきましてもお気軽にお知らせください。
当院では、白内障手術約7000例以上の執刀経験を持つ院長が手術を行います。
手術中の眼内の圧力を一定に保ち、手術中眼に負担をかけない機能に優れた最新の白内障手術機器を導入しています。
安心して安全な治療を受けていただくよう努めてまいります。
眼内レンズについて
手術時に挿入する眼内レンズ(人工レンズ)には、保険適用の単焦点眼内レンズ、自己負担となる多焦点眼内レンズがあります。手術をすることが決定しましたら、あらかじめどちらのレンズを使用するか決める必要があります。
それぞれの特徴は以下の通りです。
単焦点眼内レンズ(保険適応)
単焦点眼内レンズとは、ピント(焦点)が1点に合うレンズのことです。
通常、人間の目は老眼がなければ近くでも遠くでもピントを合わせることができます。しかし、老眼になるとピント調節ができなくなってきます。単焦点眼内レンズは焦点が合うところが1点のみなので、近く、遠くもしくは中間のどちらかにピントを合わせます。手術前に医師と話し合いどの程度の距離に合わせるか決めておきます。
ある一定の距離にピントが合いますので、それより遠くや近くを距離を見たい場合は、遠く用の眼鏡や老眼鏡で補うことになります。眼内レンズ代も手術費用も医療費はすべて保険適応なので経済的負担は少なくて済みます。
乱視度数入り単焦点眼内レンズ(保険適応)
乱視が強い方は乱視度数も眼内レンズに入ったレンズが適応になることもあります。手術前の検査で適応が決まります。
多焦点眼内レンズ(選定療養)
多焦点眼内レンズとは、遠近両用の眼内レンズです。 スポーツや趣味を楽しまれる時など眼鏡が煩わしく感じる方もいらっしゃると思います。最近は多焦点眼内レンズを希望される方も多くいらっしゃいます。
単焦点眼内レンズですと、ある一点にピントが合いますので、遠くか近くか中間にピントを合わせます。その場合、それより近くを見たい、遠くを見たい場合は眼鏡装用が必要となります。 多焦点眼内レンズのメリットは、ピントが合う距離が広くなるため、手術後眼鏡を必要とする場面が減ることです。
選定療養として認められている眼内レンズには、「遠くと近く」(2焦点)、「遠くと中間と近く」(3焦点)にピントを合わせやすくするタイプの多焦点眼内レンズや焦点深度の長いEDOF(Extended Depth of Focus)眼内レンズがあります。また、それぞれに同時に乱視を矯正する乱視度数入り多焦点眼内レンズもあります。
多焦点眼内レンズにはデメリットもあります。
デメリットとしては、多焦点眼内レンズの費用が選定療養費として必要になりますので、単焦点眼内レンズに比べ経済的負担は大きくなります。(2020年4月より選定療養として認められるようになりましたので、手術費用は保険が使用できます。以前より費用負担は少なくなりました。)薄暗い場所や夜間にライト等を見ると、光の周辺に輪がかかって見えたり、眩しさを感じたりすることがあるため(ハロー、グレア現象)夜間の車の運転などには不向きです。コントラストも単焦点レンズに比べやや落ちると言われています。
手術に際しては、目の状態、その方のライフスタイルに合わせた眼内レンズをご相談の上決めています。多焦点眼内レンズをご希望でも、目の状態によっては単焦点眼内レンズをお勧めすることもあります。
当院は多焦点眼内レンズが先進医療から外れた2020年3月まで厚生労働省認定先進医療実施施設になっておりました。現在は、選定療養実施施設として、選定療養として認められている多焦点レンズを多数使用しております。ご興味がありましたら、お気軽にご相談ください。
グレア、ハロの参考写真
参考資料
多焦点眼内レンズの紹介(選定療養)
パンオプティクス(PanOptix)
パンオプティクスは世界で広く使われている回折型眼内レンズです。国内で初めて承認を受けた3焦点眼内レンズで、遠方、中間(60cm)、近方(40cm)にピントが合う設計となっています。幅広い距離をカバーできるため、ゴルフなど遠方を見るアウトドアスポーツやパソコン、お料理などの中間距離、読書などの手元の作業において快適に見えるとされています。レンズの形状から安定性が高く、乱視の矯正にも適しています。夜間の車の運転などで、ハロー グレアが気になる可能性があります。
乱視矯正レンズあり
クラレオン ビビティ(Clareon Vivity)
ビビティは新しいタイプの非回折型EDOF「焦点を広げる」眼内レンズです。遠くから中間(60cm)までが特に見やすく、連続した自然な見え方が特徴です。ハロー・グレアなどの光学的副作用が少なく、従来の回折型三焦点と比較してコントラスト感度の低下が少ないです。夜間の光のにじみが少ないため、夜間運転をされる方にも選択されています。
細かい物を近くで見るのに老眼鏡が必要になる可能性があります。
両眼のうち、片眼を「Pan Optix(パンオプティクス)」、もう一方の片眼を「Clareon Vivity(クラレオン ビビティ)」を挿入することにより、両者の欠点を補うという方法もあります。
乱視矯正レンズあり
テクニス オデッセイ(TECNIS Odyssey)
テクニスオデッセイ(TECNIS Odyssey)は、同メーカーの3焦点眼内レンズテクニス シナジー(TECNIS Synergy)の設計を基に改良されたレンズです。EDOF(焦点深度拡張)要素を取り入れ、遠方から近方(40cm)まで自然な見え方を実現した眼内レンズで、読書やお料理、パソコン作業、ゴルフなどのアウトドアスポーツをされる方にも向いています。
テクニスシナジーと比較し、ハローグレアなどの異常光視症が改善しています。
乱視矯正レンズあり
テクニス ピュアシー (TECNIS PureSee)
テクニス ピュアシー(TECNIS PureSee)は、非回折型のEDOF要素を取り入れたハイブリッド設計が特徴の眼内レンズです。遠方・中間の見え方が優れています。従来の回折型三焦点に比べハロー・グレアが少なく、コントラスト感度が落ちにくいです。異常光視症が心配な方、夜間に運転される方に向いている眼内レンズです。
手元を見るのに老眼鏡が必要になる可能性があります。 両眼のうち、片眼を「テクニスオデッセイ(TECNIS Odyssey)」、もう一方の片眼を「テクニス ピュアシー(TECNIS PureSee)」を挿入することにより、両者の欠点を補うという方法もあります。
乱視矯正レンズあり
アクリバトリノバ プロ (Acriva Trinova Pro)
アクリバトリノバプロは回折型3焦点眼内レンズで光エネルギーを遠方・中間・近方に効率的に配分し、遠方から近方(40cm)までの視力の改善が期待でき、眼鏡依存度を軽減します。独自の非対称回折デザインによりハロー・グレアを減少させ、夜間の光のにじみを抑えた設計となっています。
低い度数もあるため、強度近視の方にも選択されています。
乱視矯正レンズあり
HOYA ビビネックス ジェメトリック (HOYA Vivinex Gemetric)
ジェメトリックは、日本メーカーHOYAが開発した回折型三焦点レンズで、HOYA独自の低グレア設計を採用しており、夜間の異常光視症が気になる方にもおすすめです。光エネルギーの均等配分により遠方、中間(80cm)、近方(40cm)にピントが合う設計になっています。
乱視矯正レンズあり
HOYA ビビネックス ジェメトリック プラス(HOYA Vivinex Gemetric Plus)
ジェメトリック プラスは、ジェメトリックを改良し、より近方をスムーズに見えるよう設計されたレンズです。特に近く(約38cm)と中間距離(80cm)がより快適に見えるため、スマホや読書をよくされる方におすすめです。
片眼にビビネックス ジェメトリック、片眼にビビネックス ジェメトリック プラスを挿入することにより、両者のデメリットを補助する方法もあります。
ファインビジョン(FineVision HP)
ファインビジョンはヨーロッパで開発された世界初の三焦点眼内レンズで、遠く・中間(75cm)・近く(35cm)をバランスよく見えるよう設計されています。世界的に使用実績があり、安定した見え方を希望される方に選ばれています。近くが見やすい設計になっているため眼鏡に頼らず生活したい方にも選択されています。
乱視矯正眼内レンズは、現在のところ選定療養の適応にはなっていません。
多焦点眼内レンズ(自由診療)
世界初の5焦点眼内レンズ「インテンシティー」(Hanita社)
世界初の5焦点眼内レンズで遠方、遠中、中間、近中、近方の5つに焦点を合わす設計の眼内レンズです。Hanita社(イスラエル)独自のアルゴリズムによるDLU(Dynamic Light Utilization)テクノロジーを採用した眼内レンズです。そのテクノロジーにより光効率が最大化されることや中間距離の視力の落ち込みを改善、またハログレアも少ないとされています。選定療養対象外の眼内レンズですので、手術費用を含め保険診療が適応されませんのでご注意ください。
「ミニウェルレディ」(MINI WELL READY EDOFレンズ)
世界で初めて開発されたプログレッシブIOLで球面収差を利用して遠くから近くまでスムーズな見え方を実現しました。従来までの回折型IOLに比較しグレアハロが少なく、自然な見え方が期待できます。
白内障手術の流れ
初診日
視力検査他、一般的な眼科検査を行います。診察後、白内障手術適応があり、手術のご希望がある場合は、眼内レンズの度数を測定する検査、角膜内皮細胞数測定、採血、結膜嚢の細菌培養などの白内障術前検査を行います。白内障手術についてご説明し、白内障についての説明書をお渡しします。
手術約1週間前に受診
検査結果のご報告と再度手術について説明いたします。手術3日前から点眼していただく抗生物質の点眼液を処方します。
手術日
手術の約1時間前に受診していただき、お身体の状態を確認します。
瞳孔を開く目薬、麻酔の目薬を点眼します。瞳孔が十分開いたら、手術室にご案内します。
手術用のリクライニングシートにお座りいただき、シートを倒し横になった姿勢で手術を行います。
目の周りを消毒して、清潔なシートをかぶせてから、麻酔の点眼を追加します。
開瞼器という目を開ける器械をつけて手術を開始します。
手術は、白内障の重症度にもよりますが、通常の場合は10分から15分程度で終わります。
手術が終わりましたら、目薬、軟膏を塗布し眼帯をつけます。
別室にご案内し、血圧等、ご体調に変化がなければ、お会計後、お帰りいただきます。処方した抗生物質の内服薬は当日の夜から、点眼液も当日の夜から開始していただきます。
手術翌日
眼帯を外し、視力、眼圧測定し目の検査を行います。
その後は眼帯をつける必要はありません。
手術翌日より首から下の入浴、シャワーはしていただいて構いません。
ご自分で洗顔、洗髪していただくのは、手術後5日目からになります。
白内障手術の費用
単焦点眼内レンズ 乱視矯正度数入り眼内レンズ(手術費用:保険診療)
| 保険自己負担割合 | 費用 |
|---|---|
| 10%の方 | 約1万5千円 |
| 20%の方 | 約3万円 |
| 30%の方 | 約5万円 |
多焦点眼内レンズ(選定療養費+手術費用:保険診療)
| 片眼につき | 費用 |
|---|---|
| EDOF眼内レンズ | 選定療養費+ 上記手術費用 (保険適用) |
| 3焦点眼内レンズ | 選定療養費+ 上記手術費用 (保険適用) |
| 多焦点眼内レンズの種類 | 費用(税込) |
|---|---|
| クラレオンパンオプティクス | 320,000円 |
| クラレオンパンオプティクストーリック | 350,000円 |
| クラレオンビビティ | 320,000円 |
| クラレオンビビティトーリック | 350,000円 |
| テクニスオデッセイ | 330,000円 |
| テクニスオデッセイトーリック | 360,000円 |
| ファインビジョンHP | 300,000円 |
| テクニスピュアシー | 320,000円 |
| テクニスピュアシートーリック | 350,000円 |
| ビビネックスジェメトリック | 310,000円 |
| ビビネックスジェメトリックトーリック | 340,000円 |
| ビビネックスジェメトリックプラス | 310,000円 |
| ビビネックスジェメトリックプラストーリック | 340,000円 |
| アクリバトリノバ プロ | 300,000円 |
| アクリバトリノバ プロ トーリック | 330,000円 |
| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日祝 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 9:30~12:30 | ○ | ○ | ○ | ― | ○ | ○ | ― |
| 14:30~17:30 | ○/ 手術 *月1回 |
手術 | ○ | ― | ○ | ― | ― |
- 診療科目
- 眼科、小児眼科、日帰り白内障手術、レーザー手術、眼鏡処方
- 住所
- 〒166-0002
東京都杉並区高円寺北2-2-1 巳善ビル2階 - アクセス
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